月刊ケアマネジメント2月号(環境新聞社)に、F-SOAIPに関する記事を寄稿致しました。

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本日は、月刊ケアマネジメントに寄稿したF-SOAIPについて書きたいと思います。F-SOAIPは、介護記録の質を向上させ、AIによる高度な分析を可能にするための重要な基盤となっています。AIとF-SOAIPの連携について以下の4つのポイントでまとめます。
1. 叙述的記録の自動構造化
介護現場の記録は通常、文章(叙述形式)で書かれるため、情報の抽出が困難という課題があります。AIは、自然言語処理(NLP)技術を用いて、これらの文章をF-SOAIP(Focus:焦点、Subjective:主観的情報、Objective:客観的情報、Assessment:気づき・判断、Intervention:介入、Plan:計画)の項目へ自動的に分類・分割します。分類・分割は自動化されているので、介護する方はF-SOAIPを意識する必要がありません。
• 活用技術: 大規模言語モデルのBERTや、確率モデルであるCRF(条件付き確率場)を組み合わせたBERT-CRFという機械学習モデルが採用されています。
• 精度:分割・分類において正解率93.2%という極めて高い性能が確認されています。
2. AIによるケアの根拠(エビデンス)の抽出
F-SOAIP形式に整理されることで、AIは単なる見守りだけでなく、ケアの「根拠」を明確に把握できるようになります。
• セルフケア能力の把握:分類されたデータに基づき、認知症患者の日常生活上の特徴や習慣などをAIが学習します。
• BPSD予測への統合:整理された「介護記録系データ」は、バイタルデータ等の時系列データと組み合わされ、BPSD(行動・心理症状)の発生メカニズム解明や予測精度の向上に寄与します。そのため、AIを動かすためには日常的な介護記録が非常に重要です。介護記録の蓄積を怠ると、AIはその性能を十分に発揮することができません。つまり、人間の勤勉さが必要なのです。
3. 音声入力とリアルタイム記録
現場のスタッフがスマートフォンやロボット(LOVOT)に音声で話しかけるだけで、AIがその内容を即座にF-SOAIP形式の記録として生成します。
• 自動アセスメント: 入力されたテキストから意図解析を行い、呼び名、得意なこと、苦手な食べ物、イライラする時といった「ニーズ」を自動で分類・収集する機能も備わっています。
• 業務効率化: これにより、「書かなくても記録が残る介護現場」の実現を目指しており、記録にかかる負担を軽減します。
4. スタッフへの適切な対処法の提示(レコメンド)
AIは、F-SOAIPで構造化された情報を元に、その場の状況に最適なレコメンドケア(対処法)を導き出します。
• 相互作用の円滑化:AIは、スタッフが音声入力した状況に対し、「優しく声をかけて、落ち着かせるような促しを行いましょう」といった具体的な予防ケアや、穏やかな接し方の視点をフィードバックします。
• 教育的効果:専門的な知識に基づいた分類が行われるため、経験の浅いスタッフでも病態像をイメージしやすくなり、ケアの安定性が確保されます。
このように、AIとF-SOAIPの統合は、介護記録の「見える化」を通じて、科学的根拠に基づいた質の高い認知症ケアを支える中核的な機能となっています。前述した通り、介護記録をサボるとせっかくのAIが上手く性能を発揮することができません。介護負担軽減のために、きちんと介護記録を入れていく必要があるのはこのためです。

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