今回は前回の続きのコラムです。
5.3つの提言
私はもともとケアテック業界にいなかった人間なので、「どうすればもっと介護業界を良い方向に変えていけるのか」をフラットな視点で見ることが出来ます。また、私自身、ケアテック業界だけに固執しているわけではないので、日本全体が社会課題に打ち勝つために何をすれば良いかを常に考えています。
そこで、僭越ながら提言が3つあります。
1)介護記録ソフトのAI連携
ケアテック企業の社長の皆様には、最先端のAIを介護施設に提供できるよう、既存製品の進化を検討してもらいたいです。API連携するだけで、AIの機能が使えるようになります。弊社では、科学的介護に使えるデータ基盤を構築したいと考えています。
2)介護保険制度の抜本的見直し
政府の皆様には、介護保険制度の見直しをお願いします。要介護度を維持または改善した場合、報酬が上がる仕組みがあっても良いと思います。またはその予防的な取り組みに関して、さらに加算を設けるなど業務設計全体を対処から予防に切り替えるための起爆剤が必要です。現在の社会保障費、そして人材リソースで介護業界の品質を維持していくためには、間違いなくAIのチカラが必要です。その方向に日本全体が舵を切れるような制度を考えていただきたい。そしてそれこそが、日本が国内外に示す「あるべき社会保障」「あるべき介護」になると考えています。
3)他国への技術移転に関する留意点
また、日本のケアテック企業の皆様には、他国への技術移転について慎重に考えていただきたいと思います。例えば中国においては、介護に関する長期保険制度のテスト運用を20都市以上で実施しています。ここにケアテックに関する日本のジレンマを持ち込むと、日本のレピュテーションに関わるだけでなく、中国の方々にも科学的介護への移行を遅らせてしまうことになりかねません。私は中国に19回渡航し、テクノロジー分野を含め中国の発展の一端を見てきました。そこに、日本式の介護記録システムの概念を入れてしまうのは、愚策でしかありません。その国のことを理解し、未来を真剣に考え、商売や名誉目的ではなく、いかに社会改題を解決するかを軸に考えた場合、日本が陥っているジレンマを持ち込んでしまうことは最も避けるべきことです。
以上、3点です。2018年にケアテック業界に足を踏み入れて今年が7年目になります。見えないことがようやく見えてきた中で、最先端テクノロジーが容易に現場に導入できない弊害について書いてみました。言葉が適切ではない部分があったかもしれませんが、ご容赦ください。
話:ゲオム株式会社・矢沢
2024年2月
(おわり)